ものはためし

何事も実際にやってみなければわからない。いろんな物事をとにかく試します。

予知能力の身につけ方

      2015/12/22

世界がこれからどうなっていくか、気にならない人はいないと思います。もちろん私もそうです。
私が現在務めている会社はウェブシステムの受託開発を行っているのですが、正直なところ先行きが暗いんですよね。会社の業績はそこそこなんですが、ウェブの受託開発という業態がもう限界。
だから最近は常に新しいことを追い求めているわけで、そのために未来を予測できれば、と思っていたところ、「未来に先回りする思考法」という本をみつけたので読んでみました。

 もしも社会が進化するパターンを見抜いていれば、状況が変わっても未来を見通すことが可能になります。

「はじめに―なぜ、99・9%の人は未来を見誤るのか」より

本書では、進化のパターンを知ってそれを現在の状況に当てはめれば未来を予測できる、と著者は主張しています。
テクノロジーの進化を軸に、人間生活や社会・国家がどのように変化してきたのか、またこれからどのように進化していくのか、が語られています。
そのどれもが明快でわかりやすく、すっと頭に入ってきます。

本書では、まずテクノロジーの本質が簡潔かつ短い文章でまとめられています。

 あらゆるテクノロジーをマクロに見れば、その本質的な特徴は、次の3つに絞られます。テクノロジーは「人間を拡張するものであること」。そして、「いずれ人間を教育しはじめること」。最後に「掌からはじまり、宇宙へと広がっていくこと」です。

(略)石器にはじまりインターネットに至るまで、すべてのテクノロジーは、何らかの形で人間の持つ機能を拡張してきました。
 斧や弓が、手の持つ機能をそのまま拡張したものだというのはイメージしやすいでしょう。

(略)テクノロジーには、時を経ると人間を教育しはじめるという性質が備わっています。新しいテクノロジーが社会に普及してしばらく経つと、今度は人間がそのテクノロジーに合わせて生活スタイルを適応させていくようになります。この状況はまるでテクノロジーが人間を教育しているかのようです。

(略)物理的な位置に着目した際にも、テクノロジーの発達していくプロセスには、ある規則性が存在しています。先ほどテクノロジーは人間の持つ機能の拡張だと述べましたが、その拡張は常に「身体の近く」からはじまりました。

(略)掌の上にあった道具は、身体を離れ器具として室内に配置され、さらに室外へ飛び出し、汽車や自動車のような移動手段になって距離を克服し、最後は重力すら克服し飛行機として空へ、さらには地球を飛び出し宇宙へと向かっていきました

「第1章 テクノロジーの進化には一本の「流れ」がある」より

この部分だけでも未来を予測するための道具としては十分すぎるほどで、それ以降の文章はおまけと言っても良い。(もちろん、読み応え十分で得るものが多すぎる豪華なおまけですが)
ここで語られている本質を現在のテクノロジーに当てはめると、それぞれが今後どのように進化していくのか、ぼんやりながらイメージできるでしょう。

ただ、本書で扱っているテーマ(人工知能とか)の規模が大きすぎて、各テーマそのものについては、未来を予測したからといって個人や中小企業でどうすることもできません。
これは本書でも以下のように述べられています。

 ITを主軸に事業を展開するなかで最近感じるのは、2013年あたりから、テクノロジーの進化が、起業家や投資家すらも置き去りにしつつあるということです。IT分野で勝負する起業家や投資家は、インターネットについて最も詳しい人たちのはずですが、彼らですら、技術の進歩の速さについていけなくなってきています。

 その一方、進歩を牽引しているのがGoogle、Apple、Amazon、FacebookなどIT界の巨人と呼ばれる企業です。彼らが投資する領域は、その他の起業家や投資家が投資する領域とすでにずれてきています。

(略)なぜIT業界の巨人だけが未来を見通し、その他の企業、そして投資家までもが遅れてしまっているのか。その理由は、巨人たちが最先端の研究者を自社内に囲い込み、クローズドな状況で開発を行っている点にあります。

 すでに学術的に最先端の研究とビジネスは切っても切り離せないほど密接に結びついており、企業は研究段階から新しいテクノロジーに関わっていないと、競争に勝てなくなっています。

(略)また、起業家や投資家が技術の進歩に追いつくことが難しくなってきているのにはもうひとつ理由があります。インターネットがデータサイエンスから自動車、金融まで、あらゆる産業に空気のように浸透していった結果、必要とされる知識がより広範囲にわたってきているのです。

 テクノロジーの変化のスピードは、今やほとんどの一般の人々の認識の限界を超えつつあります。

「第3章 テクノロジーは人類の敵なのか」より

なんの才能も気概もない庶民である私が、Google や facebook の向こうを張るなんてことできません。
本書では、未来を予測したうえでどのような心構えをし、そのようにアクションを起こすのか、といったところまで著者が丁寧に教えてくれます。
しかしながら、私でも現実的なアクションを起こせるくらいの未来となると、よりミクロな分野でかつ2・3年後くらいのごく近しい未来ということになり、そこまでいくと事業戦略の領域になりますので、本書の趣旨からは外れます。

とはいえ、本書に書かれている未来予測の方法は簡単で使いやすいものです。
いつも情報の感度を高くしている人であれば、本書に書かれている考え方を利用して、論理的に未来を予測していくことができるようになるんじゃないでしょうか。
未来に備えて体制を整えるためのツールとして、今後大いに活用していこうと思います。
かくいう私も、自分がよく知っている分野の未来を予測してみようという気になりました。ある程度の予測ができたら、このブログで公開しようと思います。

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