日本はシリコンバレーを真似できない
2015/12/22
未来を予測する方法について調べていたところ、「〈未来〉のつくり方」なんて興味深いタイトルの本を見つけたので読んでみたら、予想した内容とまったく違っていて、未来予測がさっそく外れたという話。
題名に<未来>とありますが、扱っているのは過去と現在で、シリコンバレーが<未来>をこれまでこうして作ってきた、というドキュメンタリーになっています。
もちろん、その流れの先に<未来>があるので、シリコンバレーはこれからも同じように<未来>を作っていくのだろうな、とも感じさせます。
本書で見てきたことは、技術、組織、語り、歴史、アメリカといった観点からの、未来のつくり方であった。入り口はシリコンバレーであったが、しかし、結局のところ、それもアメリカ社会という大きなプラットフォームの上での出来事として受け止める方が有益であることがわかった。
「エピローグ ー啓蒙の網の目ー」より
本書を読むと、世界を変えるようなイノベーションが次々と生みだすためには、社会全体にイノベーションの風土があり、かつみんなの意識がそちらに向かっていることが重要なのだと分かります。そうした状況で、とある地域に起こったひとつのイノベーションがまるで重力のように他のイノベーションを引き寄せ続け、どんどんと大きくなっていった結果が現在のシリコンバレー。ただひとつの地域にハイテク企業が集まったというだけではない。
ひと昔前、日本にもシリコンバレーを、という議論や活動があったりしましたが、ここのところめっきり聞かなくなりました。ことはそう簡単ではない、ということに気がついたんでしょうね。最近では日本でもイノベーションや起業に対する意識が高まってはきているものの、社会全体としてはまだまだ浸透しているとは言いがたく、やはりこれからもしばらくはシリコンバレーに水を開けられる展開が続きそうです。
ただ、日本という国家が単位だと難しいとしても、市町村や企業といった小さな単位に落とし込んで、風土や組織を作りこんでいけば、マイクロ版シリコンバレーのような存在を作ることはできるんじゃないかな、とも思います。
そういった意味で、地方自治体や企業の運営に携わっている方に本書はおすすめですね。